KAYAK FISHING
手漕ぎであるカヤックは風に弱い船舶です。パドリングスキルは必要ですが、過度の強風には絶対に勝てません。経験とパドリングスキルを冷静に自己評価し、見合った条件の中で漕ぎ出すようにしましょう。
また、現在は無風でも後に吹いてくる可能性があります。それらを予見することが必要で、吹いてくるであろう前には上がるようにしましょう。同時に、地形による風の強さの変化、風向きの変化なども考慮しましょう。
現在ではインターネットや携帯電話からも、天気図や気象情報、風予報などの情報を得ることができます。それらを有効に活用しながら、現場での海面の変化や雲の動きにも注意し、常に天候の急変に備えましょう。
せっかくの休日に風が吹いてしまい、海に出ることができなくても「待てば海路の日和あり」です。無茶をして海に出るよりは、来週は凪ぐ、と信じて別の安全な遊びに切り替えましょう。
基本的なパドリングスキルの習得は必須です。当たり前ですが、満足に漕げないようでは危険を回避することはできません。携帯電話を持つことと同様に、パドリングスキルの向上は必要な安全対策です。パドリングをおろそかにするということは、自ら安全対策を放棄しているに等しい、と認識しましょう。「パドリングスキルが必要になるほど風の強いときは漕がないから大丈夫」というのは、愚かで浅はかな考えの代表例です。全国にカヤックスクールがありますので、信頼できるカヤックスクールでパドリングの基本を身につけましょう。力任せのパドリングが通用するのは、ほんの短い時間だけで、全く意味がありません。適切なパドリングスキルを身につければ危険回避だけでなく、ポイント移動も楽々です。
トラブルの多くは漁業従事者との間にあるようです。そのため、出艇場所として漁港のスロープ利用は避けましょう。スロープは滑って危ないというだけでなく、港内なので、他船舶との接近の可能性、往来の邪魔になる可能性が最も高く、カヤックの安全からは程遠いものです。漁港や漁港周辺は危険地帯と認識しましょう。
出艇は他船舶が接近困難な砂浜がカヤックには適しています。海水浴場は便利な出艇場所ですが、シーズン中の海水浴場の利用は遠慮しましょう。早朝は誰もいなくても、帰ってきたときには小さな子供たちがいっぱい泳いでいるかもしれません。また、駐車スペースがトラブルの原因になることもありますので、無理な駐車はやめましょう。
出艇場所に水道があるからといって、艇や釣り道具を洗うのは止めましょう。それが原因で出艇禁止になった場所も多くあります。「カヤックを洗っても良い」と明示されていない限り、使用するのは止めましょう。通りかかった地元の人が洗っていいよ、と言っても、それが地区の総意であるとは限りません。普通のカヤッカーはポリタンクなどで水を持参し、その水で装備を洗っています。それができないのであれば、カヤックで遊ぶのをあきらめましょう。
定置網、養殖施設など漁業施設とその周辺、海女さんなど潜水漁業船の周辺は避けましょう。共同漁業権によって法的に守られており、魚道を妨げたなどの理由でそれを侵害した、ということになりかねません。それに網の周辺は意外なほどロープが遠くまで伸びていて、それにルアーが掛かってしまう可能性があるなど、近づくとロクなことがありません。漁港、漁港の出入り口付近や航路、その他船舶往来の多い海域は、言うまでもなく、衝突事故の原因になります。横断も安全を確認して速やかに。その他、三角波が立ちやすい場所であったり、危険箇所はそのフィールドによって様々です。その場所でのローカルルールも存在するかもしれません。事前にその海域近くのシーカヤックショップなどに問い合わせてみましょう。被視認性向上のため、一応フラッグを立てましょう。フラッグを上げていればよいというものではなく、基本的には他船舶から自分のカヤックは見えていない、と考えて行動しましょう。オートコントロールで作業しながらワッチ(見張り)無しで航行している船もありますので、その場合、当然フラッグは無力です。他の船舶に見つけてもらおう、そして避けてもらおう、と考えるのは非常に危険です。常にこちらがワッチし、船が近寄ったら避ける、のではなく、船が近寄る前に避けて、衝突やニアミスを未然に防ぐようにしましょう。また、フラッグの抵抗(風、沈脱・リカバリー時)や雷の際は、フラッグが却って危険を招く可能性もあります。強い負荷がかかった時には自動的に外れるようにセットしておくといいでしょう。他の船舶の往来が全く無い海域以外では、アンカーの使用は危険です。接近する船舶をよけるため、迅速に動くことができなくなります。使用する場合は、緊急時にアンカーロープをすぐに切断できるようナイフを携帯し、ロープも切断できるようコクピット周辺に留めておきましょう。パラシュートアンカーも同様ですが、アンカーよりは制御しやすいと思います。使用する際にはロープをコクピット周辺からバウのグラブループを通して前に出し、風上を向くようにセットしましょう。緊急時、移動時はパラシュートアンカーに向かってフォワードストロークで漕げばすぐに回収できます。しかし、その時間もない、という場合に備えて、ロープ切断用のナイフは必ず携帯しましょう。ロープとナイフはセットです。カヤック用のパラシュートアンカーを使用しても流されすぎる場合は、もうやめて帰りましょう。また、アンカー代わりにブイや魚網などに許可無く係留することは違反です。共同漁業権の侵害に該当します。
万が一の場合に備えて、装備には万全を期しましょう。海ではウェアもレスキューツールです。気温、水温の低い時期は防水性、防風性、保温性に優れてたウェアで海に出るべきです。ドライスーツが最も優れており、ウェーダーや長靴は沈脱の際に浸水するので再乗艇の妨げとなり非常に危険です。適切なウェアリングで海に出ましょう。フィッシングにおいては一般化しているパドルリーシュは、離岸時、着岸時には必ず外すようにしましょう。乗り降りの際に引っかかって危険です。また、サーフ地帯や波打ち際で沈した場合、リーシュが体に絡むと深刻な事故に至る可能性があり非常に危険です。リーシュが原因の死亡事故もあるようです。沈の可能性の高い状況では必ず外しておきましょう。必須のレスキューツールは携帯電話+アクアパックです。アクアパックは完全防水の携帯電話ケースで、そのまま通話が可能です。携帯電話が防水のモデルであっても信用せず、アクアパックに入れて携帯しましょう。アクアパックに入れた携帯電話が無ければ、救助を要請することもできず、偶然船が通りかかって気付いてもらえるまで漂流するしかありません。また、アクアパックに入れた携帯電話は沈脱して艇から離れてしまっても運用できるよう、艇ではなくPFDなど体に付けて携帯するようにしましょう。救助が日没後になることを想定し、ストロボライトをPFDに付けておくのも有効です。ただ、故意の夜間航行は危険が多く、避けた方が無難でしょう。
シーカヤッカーも、カヤックアングラーも、好む好まざるに関わらず「船乗り」です。船乗りはシーマンシップに則った行動をすべきであり、そうでなければそもそも海に出るべきではありません。自力で戻れない、ということは船乗りとして非常に恥ずべきことです。しかし、力及ばず不覚にも窮地に陥ってしまった場合は、躊躇無く海上保安庁に連絡し、救助を要請しましょう。救助要請は言うまでもなく「118」です。
水産庁のサイトで確認できます。ま各都道府県で定められた遊魚、海面利用のルールがあります。漁業団体が水産資源管理のため、捕獲禁止区域や魚種によって禁止期間などを定めていることもありますので、我々も協力するようにしましょう。
海上衝突予防法、港則法の中で、カヤックは雑種船、ろかいをもって運転する船舶に該当します。